Mom's Language Cafe

~ わたしの英語時間 ~

『さようなら』

ぼくもういかなきゃなんない
すぐいかなきゃなんない
どこへいくのかわからないけど
さくらなみきのしたをとおって
おおどおりをしんごうでわたって
いつもながめてるやまをめじるしに
ひとりでいかなきゃなんない
すぐいかなきゃなんない
どうしてなのかしらないけど
おかあさんごめんなさい
おとうさんにやさしくしてあげて
ぼくすききらいいわずになんでもたべる
ほんもいまよりたくさんよむとおもう

よるになればほしをみる
ひるはいろんなひととはなしをする
そしてきっといちばんすきなものをみつける
みつけたらたいせつにしてしぬまでいきる

だからとおくにいてもさびしくないよ
ぼくもういかなきゃなんない
すぐいかなきゃなんない
ひとりでいかなきゃなんない
すぐいかなきゃなんない


(谷川 俊太郎『さようなら』)


もっと広い世界を見たくて、親元をなかば強引に離れていった遠い日の自分と、ひとり息子であるわが子の未来の姿を同時に重ね合わせ、なんとも言えず胸がいっぱいになる詩です。

そして、シンプルな言葉の羅列の中に、人の原点、とも言うべき温かさや奥深さも感じられる気がします。

谷川俊太郎さんの詩は、自分が小さい頃から好きで読んでいますが、この詩に初めて出会ったのは数年前、DiVaというユニットによる同タイトルの曲を聴いたときでした。

谷川さんのご長男であるピアニストの賢作さんが作曲・編曲を担当。

ヴォーカルは、キッズソングのCDなどでもおなじみの高瀬"makoring"麻里子さん。

歌詞に、その言葉以上のいきいきとした魂を吹き込むかのような、伸びやかで艶のある歌声。
彼女の歌を聴いていると、ああ、言葉ってもしかしたら、歌詞になって歌ってもらうのを待ってるんじゃないかな、とさえ思えてくる。

この『さようなら』は、まっすぐに素直に、かつ詩情豊かに歌われていて、その世界にぐいぐい引き込まれていきます。

賢作さんの美しく印象的なメロディーと相まって、一度耳にしたら忘れられない曲。
機会があれば、ぜひ聴いてみてくださいね。

谷川俊太郎さんは、ほんとうにいろいろなジャンルの詩を書く方ですが、この『さようなら』などは、突然 天のどこからか言葉のメッセージがするすると降りてきて、それをサーッとひらがなで書き留めた……そんな印象も受けたりします。
もしかしたら、そういう詩の書きかたもできる方なのかもしれません。

それにしても、詩と曲の親子合作、素晴らしいですね!


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